映画『アンコール!!』

映画『アンコール!!』制作秘話

実体験から普遍的な物語へ 映画『アンコール』

映画『アンコール』

「半自伝的と言ってもいい。思わず家族を失った時を思い出して、泣いてしまったシーンもあるんだ」。自分の家族の体験を基に本作を描いた、脚本家であり監督であるポール・アンドリュー・ウィリアムズは語る。「基本的には男が自分を見つける物語なんだ。人は何歳になっても、何かによって劇的に変わる。老人は家にこもっていると思っている人もいるけど、大いに毎日を謳歌していることを知ってもらいたかった」

この「素晴らしくよく書けた脚本」に、イギリスを代表する伝説の女優ヴァネッサ・レッドグレイヴはすぐにオファーを受け入れた。「私の演じたマリオンが老人の合唱団に入るというのがいいわ。とても特別なテーマ。でも重要なのはテーマだけじゃなくて、それがいかに巧みに描かれているかよ。それにこの物語には、いろんな内容が何層にも重なっている。合唱団には生きがいを与えるという素晴らしい役目があること、エリザベスの生き様や夫と息子の話からも生きる希望を感じるという風にね。これは三世代にわたって描かれた物語なの」

新進気鋭の女優、ジェマ・アータートンは通常よりも低い出演料でこの仕事を引き受けた。「私は公営団地で育ったの。アーサーはそこにいたお父さんやおじいちゃんたちによく似ている。とにかく脚本が泣けたから、ぜひともやりたかったの。監督に“タダでもやるわ”って言ったの。そうしたら“君に任せよう”って言われたわ」

物語を彩る豪華俳優陣 映画『アンコール』

ずば抜けて美形で、溌剌としたオスカー候補俳優の映画スターであるテレンスは、“老人”役を演じるのに戸惑った。「実はすごく不安だった。自分にはできないと思ったわけじゃない。役との開きを感じただけだ。アーサーは実際の私よりも年上というわけではないが、年上のように役作りした」。この映画を担うには、役と通じ合えることが重要だとスタンプは心得ていた。「ポールからアーサーは実の父親を基に描いたと聞いて、自分の父親にも似ていることに気づいた。私の父はかなりハンサムで、感情を全く出さない人だったが、母は父にぞっこんだったんだ」

この映画の中の重要な要素に、マリオンとアーサーの関係がある。「現代の夫婦とは違う老夫婦の深い絆と愛を示したかった」と、ポールは語る。

「マリオンはとにかく夫を深く愛している」とヴァネッサは語る。「アーサーも妻を深く愛しているけど、表には出さない。微妙なニュアンスで醸し出すだけ。多くのカップルのように、当人以外の者からすれば、およそ夫婦らしくないように見えるけれど、当の2人はお互いにすごく愛し合っている」。

実体験から普遍的な物語へ 映画『アンコール』

本作の目的は、大人の市民合唱団を忠実に描くことだ。イギリス北東部を視察していたケンとポールは、ある合唱団コンテストに出くわした。2人は合唱団“ヒートン・ボイス”に注目。2000年にリチャード・スコットが立ち上げた、オーディションなしで誰でも受け入れる合唱団だ。「私のアレンジに興味を持たれたのかもしれない」とリチャードは話す。彼は今回音楽のアレンジを担当した。「自分が映画に関わるなんて思ってもいなかったよ」と笑う。

リチャードは合唱曲の選択が普通ではない。「“ヒートン・ボイス”では、幅広いジャンルのものをやる。アフリカの歌や、東欧の歌、ゴスペル、ジャズナンバー、ヴァン・モリソンの“ムーンダンス”やアヴリル・ラヴィーンの“アンダー・マイ・スキン”なんかもね」。そんな彼すら、思いがけない曲を手がけることになる。「歌のリストをもらって、びっくりしたよ。「モーターヘッドの“エース・オブ・スペーズ”? B-52’sの“ラブ・シャック”?ってね」。彼のやり方はメロディー以外の余分なものははぎ取って、組み立て直す。「私としては歌の世界をうまく伝えつつも、同時に合唱団が楽しく、自然に歌えるようにしたかった」

製作チームは既に合唱団で歌っている人々に、キャストとして参加を求める広告を出した。リチャードは言う。「一般市民の合唱団には強い声もあれば、弱い声もある。最初は苦労した。音程を外さない人もいれば、うまくない人もいる。でもそれぞれが必死になりながら、やがてひとつにまとまっていくのを見るのが楽しかった」。もちろん、劇中の“年金ズ”の中にはイギリスで活躍する俳優もいたが、リチャードが本物の市民合唱団ではないことを忘れてしまうぐらいに、俳優は合唱団に溶け込んでいた。「これまで素晴らしい歌声の持ち主とやってきたが、テレンスとヴァネッサが初めてソロで歌うのを見たときは格別だった」とリチャードはため息をつく。「その迫力に驚いた。現場では2人の歌に合唱団のみんなが涙したよ」

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